かれこれ10年以上昔の漫画で、ヤングサンデーに連載されていた作品です。
描かれた方は六田登先生。
不朽の名作にして世界一短いタイトルの『F』や、短足・チビな少年があらゆるスポーツ(当時は凄くマイナー)に果敢に挑む『ダッシュ勝平』などの作品を世間に発表されています。
そんでもって今回紹介する『ICHIGO』は、ガラリと雰囲気が異なり、どちらかというとアンダーグラウンドな世界観が漂ってます。
ちなみにキャッチコピーは「キミの知らない戦後史」…なんですわ。
【少し端折りながら登場人物紹介】
梅川一期:主人公にして殺人鬼。殺人をする事によって自身が生きているという実感を認識してしまう困った人。生後間もなく肺炎を患い、肺の一部を摘出している。
一期のオトン:梅川建設代表取締役。戦後一代で建設会社を支えてきた破天荒な親父。でも息子が可愛い。
一期の弟:どちらかと言うと優秀な弟。後に梅川建設二代目社長に就任の予定だったが…
一期の嫁さん:年上女房。一期が殺人を繰り返すのを止めるように促すも、あの人は病気ですから…後に男児を出産。
一期の舎弟:うだつの上がらない建設現場の一従業員だったが、同僚を殺害して以来一期を慕うようになる。
一期の親友:最初に一期が殺害した人物にして同級生。享年12歳。
一期の親分:一期17歳の時に出会い、暴力団幹部殺害を一期に依頼して以来交友関係に至る。トカレフの撃ち方を教えたヤクザ。後に大幹部。さらに一期の標的に。
【みどころ】
この物語は戦後の復興からスタートし、「男として生まれたなら都を創るべきだ」…ってな言葉がチラホラと出てきます。要はデカくて後世に残るようなものを創ろう…ってな事です。
戦後の復興というかたちで都を創り上げようとする父親、殺人という特殊な方法で自身の優位性を見出して生きている事を実感している息子、兄を嫌いつつも何処かで羨ましく父親の後を追う弟…彼ら三人が築き上げていく『都』と、その結末に集約されます。
物語の舞台が大阪とか神戸、高知なので関西弁が多いのも事実なのですが、コメディではなく、物凄くシリアスでダークなストーリーになってます。
残酷描写は『殺し屋1』に及ばないにしろ、多分文庫化されても暗すぎるストリーのため、売れないような気がします。
しかもクライマックスでは幸せになる登場人物は一人も居ません。
シャレにならない重過ぎるラストでもあります。
興味のある方は漫画喫茶で読まれることをオススメします。
ちなみに、何かと殺人とか殺害という単語が多いく、ある意味過激な作品ですので、読まれる方はくれぐれも悪い方向に影響を受けないようにしてください。
また、悪い方向に影響を受けてもらう事を前提として紹介しているわけではなく、エンターテイメントとして読んで面白かった作品だったのでこの場で紹介させていただいています。
そこらへんについてはご注意を…