先日の記事で陰陽座の『甲賀忍法帖』を紹介しましたが、原作になってる小説はおろか漫画の方の結末がどのようなものか読んでなかったので、休日出勤の帰宅時に本屋さんへ行って、文庫版を購入してきました。
【おはなし】
徳川家康の世継ぎとして長子・竹千代と次子・国千代。
江戸幕府内ではいずれを世継ぎにするか派閥が生まれ、徳川家康は派閥争いを丸く治め、且つ幕府の誰もが犠牲の出ない方法を模索してました。
そこで出た妙案が徳川の侍ではなく、忍者同士による代理戦争というはた迷惑な方法が採用されました。
選ばれたのは甲賀と伊賀忍者の十名ずつ。
甲賀は国千代、伊賀は竹千代の代理として忍法合戦と称して殺し合い、それぞれの一族の精鋭である十名を殺した一族が勝者となり、千年に及ぶ一族の繁栄が約束される…と、いうものです。
甲賀卍谷衆頭領の孫である弦之介と伊賀鍔隠れ衆頭領の孫娘である朧は400年仲違いしてた一族の隔たりを感じさせない恋人同士で、後に控える結婚を心待ちにしてる二人。
だが非情にも代理戦争のリストには甲賀、伊賀の十名の中に二人の名前が記載されていたのだった…
(…ってな感じの物語です)
絵はこんな感じ。(アニメ版も観た事がないのですがね…)
原作者である故・山田風太郎先生のアイデアを巧みに表現され、重厚で説得力だけでなく迫力のある せがわまさき先生の画力に没頭してしまい、上中下巻の3冊を一気に読んでしまいました。
まず、「甲賀忍法帖」というタイトルがあるのに「バジリスク」というタイトルになってるのか…?
コレは初めて知りましたが、主人公・甲賀弦之介とヒロイン・朧の能力を示してます。
朧は見つめた相手の能力全てを無効化し、弦之介は見つめた相手を自殺させます。
(忍者にとってどちらもシャレになってませんね)
バジリスクというファンタジー上の怪物も睨んだ相手を死に追いやります。
だからタイトルが「バジリスク」なんですね。
そして人物全てが生々しくリアルに描かれてますが、登場する忍法は現実的ではないものばかりです。
言い方を変えるとバケモノ同士のとんでもない戦いです。
人間ですか?
いえ、バケモノです。…と、言わしめるものばかりです。
だからこそエンターテイメントとして楽しめる内容とも言えます。
物語の方は…
ロミオとジュリエットを連想いただければ分かり易いと思います。
悲愛の物語ですね。
見た目や技がとんでもない人達が大勢登場しますが、弦之介と朧に限定して言うと「ロミオとジュリエット」です。
だからかどうかは別にして、結末は悲劇です。
弦之介と朧は隠り世で結ばれるんですわ。
(ここらへんは陰陽座が若干ネタバレ気味に言っちゃってます)
時代背景などを考えると、当然の結末かもしれませんし、少年漫画のようなものを望んでたら「何じゃいこりゃァ!?」…ってな事になります。
メッセージ性がどうこう言うよりも、エンターテイメントとして「物語」を楽しむのが正しいのでしょうね。
…が、物語の時代背景、大きな筋道などを考えると、よくまとめられており、グロ過ぎる残酷描写を極力抑えられてます。
ま、まァ…
甲賀、伊賀問わずに女性忍者(くのいち)は何故か「オッパイ担当」と言いたくなるキャラが居ますがね…
兎にも角にも、前述のバケモノな描写や女性の裸体がNGでなければ楽しめる作品です。
バケモノな描写とは…
両手両足がゴムの様に伸びたり、全身の皮膚で血液を吸い取ったり、吐息が毒だったり、不死身とかを指し示します。
リアルな描写に嘘の表現を加味する…
コレって漫画ならではの面白さだと思ってるんですわ。
要はリアルなだけだと面白さに限界がある…と、常に思ってるんですね。
そういった考え方にドンピシャです。
あ…
鼻毛ドーン!
…ってな描写があるので、万人にオススメできないのが辛いです…
いや、ホントに鼻毛が殺戮兵器に…